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実施報告|2022年度修士学生フィールドトリップ

12月4日‐5日に、文化政策コース修士学生のフィールドトリップを実施しました。


今年度は山形県鶴岡市を訪問。羽黒山周辺の文化的景観の中心である国宝五重塔の視察、2018年3月に開館し地域の文化拠点としての役割を期待されている荘銀タクト鶴岡の事業及び国内唯一のユネスコ食文化創造都市である山形県鶴岡市による食文化推進事業の調査を行いました。ご協力いただきました皆様には、深くお礼を申し上げます。


・羽黒山 国宝 五重塔

・荘銀タクト鶴岡

・鶴岡市役所

・鶴岡市役所櫛引分所

・国指定史跡 山居倉庫


1)羽黒山 国宝 五重塔

 山形県には6点の国宝が存在するが、そのうちの3点は鶴岡にある。また国指定の文化財数でも県内の半数以上をこの町が抱えており、文化の積層・種類共にポテンシャルは高い。しかし、首都圏からの時間距離が遠いことから観光面で生かしきれていないのが永年の悩みでもあり、今回代表的な国宝・五重塔を視察し、また周辺地域(鶴岡市中心地・酒田市)の文化財との回遊性などを調査した。羽黒山有料道路が冬季閉鎖に入った初日であったが、五重塔には雪模様の中、静かな環境を求めて想像以上の訪問者が確認できた。また、塔に至るまでの参道は特別天然記念物に指定された6百本近くの杉や、承応3年月山麓より8kmの水路を引いた古代土木など周辺域と一体となった資源であることは特筆されよう。

 街はコンパクトにまとまっており、隣接の酒田市の保存街並みなどへの道路状況(バス路線も含め)は、地方都市にしてはかなり充実していて充実感の高い見学ルートが構築できる。


2)荘銀タクト鶴岡

 荘銀タクト鶴岡(鶴岡市文化会館)は40年以上利用された前文化会館から、多くの議論の末、部分的改修ではなく建て替えという選択のもと、2018年3月に開館した。地方銀行である荘内銀行がネーミングライツを買い取り現在の呼称となっている。所在地近くには荘内藩の藩校であった致道館があり、会館建設の際には文化的景観の調和を意識した設計が取られている。また、鶴岡公園から羽黒山、月山、金峯山を眺望した際に、その風景が自然景観として調和するよう高さを意識した設計にもなっている。このような景観への配慮及び意識は近年多くの自治体で積極的な取り組みがされており、今回の視察でもその実際を確認することができた。

 当施設職員へのヒアリングへの前に、市民に対して開館日は常に開放している劇場ロビーにおいて開催された、タクトロビーコンサートを鑑賞した。(本コンサートは予約不要、無料での開催)我々文化政策コース3名を含み日曜日14:00開演(悪天候)で20名程度の鑑賞者が確認された。特筆すべきは、本コンサートシリーズは荘内地方を含む山形県内のアーティストを起用していることである。ここに当施設が意識しているハードの充実とソフトの育成を感じることができた。鑑賞者は母親に抱かれた乳幼児から高齢者まで幅広かったことも付け加えたい。当日大小いずれのホールでも公演は行われていなかったが、開放されたロビーで勉強に励む中高生や、読書に耽る成人、そしてロビーコンサート、地域に開かれた公共文化施設の可能性を強く感じた。

 終演後タクトつるおか共同企業体の軍司氏、伊藤氏とコロナ禍で経験した新たな活動とその効果と意義、改善点について意見交換を行った。人口12万人を下回る鶴岡市にとって、荘銀タクト鶴岡は過剰な文化施設に映るかもしれない。しかし今回のFTを通して、元来鶴岡市が持っている文化的背景と豊かな自然に育まれた市民の精神は、今後荘銀タクト鶴岡の機能を最大限活用し、地域の文化拠点として成立させるだろうと確信した。今後とも当施設の活動に注目したい。


3)鶴岡市企画部食文化創造都市推進課

 鶴岡市は、2014(平成26)年ユネスコ創造都市ネットワークに加盟が認定され、食文化分野では国内初のユネスコ創造都市となった。食材の生産から加工、流通、飲食、観光、食器等を含めて、裾野の広い多彩な食文化を保存・継承していく積極的な取り組みを支援している。今回のFTでは、鶴岡食文化創造都市推進協議会による「地域の食をテーマにした料理教室・体験事業等支援補助金」を活用した鶴岡の行事食講座「大黒様のお歳夜」に参加しながら、講座主催者である中野りつ氏(元・推進協議会フードツーリズム担当、現・一般社団法人DEGAM鶴岡ツーリズムビューロー)をはじめ、運営協力者である川島氏(庄内観光物産館事業部商品企画部部長)、加藤氏(同社次長)に対してヒアリング調査を行った。現状ではソフト事業に対する助成を受けることで行事食体験プログラムを実施・継続できていることを確認したが、今後は調理加工施設等のハード面に対する支援も必要としていることが明らかになった。

 これを踏まえて、鶴岡市企画部食文化創造都市推進課を訪問し、三浦課長、大川主事に対してヒアリング調査を行うことができた。計6名で構成される同課では、姉妹都市や海外のユネスコ創造都市との国際交流に対応できる担当者(JETプログラム・米国出身)をも配置している。同課の中には、市の食文化関連予算のほぼ全てを委託する協議会事務局(独自に2名雇用)を設置することで、市民の食文化活動支援を円滑に行うことができている。

「鶴岡市食文化創造都市推進プラン(令和元年度~令和5年度)」(①食文化の伝承・創造と共に歩む産業振興〔目標取組数33〕、②食文化を活かした交流人口の拡大〔目標取組数12〕、③食文化による地域づくり〔目標取組数43〕)は、協議会に加盟する農協、森林組合、漁協、商工会、DEGAM、産業振興センター、大学、飲食販売等団体、食生活改善推進協議会等の34団体と連携を密にすることで、総合的に推進する体制を構築できている。特に、地域自給経済圏を形成する庄内スマート・テロワール、交流人口の拡大を目指すフードツーリズムや国内外でのプロモーション、さらに鶴岡型ESDによるSDGs実現が推進されている。まもなく5年間の推進プランが終期を迎えるため、新たな中期計画策定に向けての検討を開始したとのことである。昨年に大分県臼杵市が国内2番目のユネスコ食文化創造都市に認定されたことを受け、今後両市では、食文化による郷土づくりカンファレンス等の開催を通じて、都市間連携を強化していく予定である。



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