開催報告1(Part Ⅰ|劇場が直面する課題)|国際シンポジウム「劇場の未来を考える課題解決型シアターマネジメント2022」

2022年11月16日(水)国際シンポジウム「劇場の未来を考える 課題解決型シアターマネジメントー危機を乗り越えるために」をオンライン開催いたしました。PartⅠは協力劇場及び関係者によるクローズドセミナー、PartⅡでは海外からの専門家を迎えての基調講演、ディスカッションを行いました。研修生のみなさま、各館長、アドバイザリー、関係者のみなさまには、深くお礼を申し上げます。


<順次公開予定です>

■開催報告1|PartⅠ 研修生によるプレゼンテーション 

■開催報告2|PartⅡ 海外招聘パネリストによる基調講演 

           協力劇場館長・本事業アドバイザリー・海外招聘パネリストによるラウンドテーブル

 

Part Ⅰ|劇場が直面する課題


オープニングリマークスでは、本事業ディレクター垣内名誉教授が、日本における劇場を取り巻く状況を概説したうえで、2022年3月兵庫県で実施したアンケート調査の結果もふまえ、鑑賞活動におけるコロナ禍以降の人々の意識の変化についても触れました。


「劇場活動は、コロナ禍で非常に大きな打撃を受けました。感染抑制のために、人流を止めることはやむをえないことでしたが、劇場の本質は、特定の時間、空間に人々が集まり、体験を共有することにあると思います。不要不急と言われたことの精神的ダメージもありましたが、閉館や観客数制限は劇場活動への直接的なダメージとなりました。一方、対面での活動ができなくなったことで、クローズアップされたのはデジタル化の推進です。デジタル化は、今や文化全般で進展しており、作品と最初に出あうのは、自分の部屋でスマホで、といった方も増えてきています。舞台配信は、コロナ巣ごもり中の多くの人々に享受され、これまでの顧客とは異なる人々にもつながりました。オンラインであれば、いつでも、どこでも、そしてチケット代よりもはるかに安く、鑑賞ができます。また、告知も、紙媒体やホームページに加えて、機動性の高いSNSの利用が進みました。


しかしながら、各種調査からは、人々の「ライブ」へのニーズは根強いということも見えています。コロナ禍が落ち着けばライブで芸術を楽しみたい人は多く、一方で、コロナ禍が落ち着いた後もオンライン配信を鑑賞し続けるという人は非常に少ないようです。ライブの舞台芸術鑑賞を主たる活動とする劇場では、時間とお金をかけて、チケットを買って、劇場に来てくれる顧客を、いかに満足させることができるか、旅行や飲食、ネットサーフィンなど他の時間消費型活動といかに差別化を図れるか、ということが、これまで以上に重要になっていくでしょう。優れたコンテンツを作り続けることこそ優先されなければならないわけですが、一方で、デジタル化にどこまで投資すべきかは、悩ましい課題です。それでも、生の舞台芸術を作り続けるために、デジタルの恩恵を最大化することも、今後検討されなくてはならない重要課題となるでしょう。さらに、昨今のウクライナ情勢などによる光熱水費の高騰や、人件費の値上がりなど、今後経費の増大も懸念されています。こういった不透明な状況の中、今、何をすれば、劇場が持つ文化力を次の世代につなげていくことができるでしょうか。今日は、このことを皆さんと一緒に考えてみたいと思います。」


各劇場プレゼンテーション<7劇場×15分>

最前線からの報告 |司会 小川由美子


コロナ禍における各劇場の取り組み等を共有するために、今年度協力劇場より6施設、8名の研修生がプレゼンテーションを行いました。地域の特色、文化的背景をふまえた設立経緯、運営方針、施設や組織等の概況をはじめ、主な事業について説明したのち、緊急事態宣言下での閉館を経て、活動再開から、コロナ禍という危機に立ち向かうための取り組みなど具体的な事例をご紹介いただきました。


■発表劇場

 ①札幌コンサートホール Kitara Sapporo Concert Hall Kitara

 ②日立システムズホール仙台 Hitachi Systems Hall Sendai

 ③りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館 Niigata City Performing Arts Center “RYUTOPIA”|ご欠席

 ④神戸文化ホール Kobe Bunka Hall

 ⑤兵庫県立芸術文化センター Hyogo Performing Arts Center

 ⑥松江市八雲林間劇場 しいの実シアター Yakumo Forest Theatre Shiinomi Theatre

 ⑦北九州芸術劇場 Kitakyushu Performing Arts Center



札幌コンサートホール Kitara(清宮氏)は、「札幌市の主な芸術文化活動」「札幌市芸術文化財団と札幌コンサートホール Kitara」「事業の3つの柱」をご紹介、「現在の課題と取り組み」として、来場者の維持及び新規開拓への取り組みについてに触れ、ブランド力を高めるためのプログラムづくり、新たな客層へ向けた公演の充実、それに伴う人材育成の重要性を挙げてくださいました。


日立システムズホール仙台 (石丸氏・佐藤氏)は、多様な機能を持つ施設の紹介のちに、本事業特別講座でも取り上げたロジックモデルにも言及。PDCAサイクルとロジックモデルを活用しながら、劇場でのバリアフリーへの取り組みを例に、仮設タイプ・ロジックモデルを独自に作成、「場当たり的な課題解決」「職員の知識、対応能力のばらつき」他、具体的な問題点をあぶりだし、その解決への糸口をさぐる、という大変意欲的なプレゼンテーションでした。


神戸文化ホール(坂本氏)は、劇場が直面する課題、として、2023年に開館50周年を迎える神戸文化ホールにおける人材育成を軸に据え、インターンシップ、舞台機構講座(舞台のつくりかた編 宙のソラミミ)等の活動紹介を行い、神戸市でのアーティスト、文化関係者への相談窓口の設置についてなど、文化芸術と地域をつなぐひらかれた存在であることを意識されたご発表でした。


兵庫県立芸術文化センター(酒井氏・波多野氏)は、「阪神淡路大震災からの復興のシンボル」「劇場を街のみんなの広場に」という劇場において、実際に取り組んできたコロナ対策を中心にご発表いただきました。「コロナワーキングチームの設置」「ガイドライン等の制定」等8つの項目を挙げ、KOBELCOホールでの気流実験についても動画でご紹介。次々変わる状況に、真摯に立ち向ってこられた様子が印象的でした。


松江市八雲林間劇場 しいの実シアター (有田氏)は、中山間地にある劇場の特性から述べ、地域の子供たちに向けた「未来学校2022」での活動、また5年ぶりに開催された国際演劇祭「松江・森の演劇祭(2022年11月)」についてもご報告くださいました。各活動での成果として「ボランティアクルーの成長」「近隣住民の変化」「行政とのかかわり、連携」等を挙げ、地域に根差した劇場の存在感を示しました。


北九州芸術劇場(吉松氏)は、「観る」「創る」「育つ」「支える」の4つの事業について、具体的活動をご紹介。新型コロナの影響と取組みとして「Re:北九州の記憶」「やってみた動画」に挑戦、事業に特化したオンライン配信、観客目線での動画シリーズ配信などの実現と合わせ、各事業の実施状況をご報告くださいました。そのうえで、定量的評価に加え、定性的評価への課題や劇場運営における課題に言及されました。


(11月16日 国際シンポジウムPartⅠより)


■アドバイザリーからのコメント

プレゼンテーション終了後、本事業アドバイザリー永山先生、津村先生からのコメントを頂戴しました。各研修生の発表を汲んでの見解、提言に頷かされる点が幾つもありました。


永山恵一氏(株式会社 政策技術研究所 代表取締役)

「札幌コンサートホール Kitaraには、複数館でひとつのコンセプトを回せるようになるとよりよいのではないでしょうか。日立システムズホール仙台には、ひとつの取り組みを構造的に、長期的なアウトカムまで見据えて整理することは大事で、これは説明力を高めるものと思う、神戸文化ホールは文化芸術と社会をつなぐにはアートマネジメントが重要との指摘はもっともで、エンゲージメントということばを頭に置いておかれるといいかもしれません。兵庫県立芸術文化センターのコロナ対策は先進的な取り組みでわたしたちも勉強をさせていただきました。これまでに育まれてきた地域住民がこれから支援してくれる、乗り越える力になってくれるのではないかと思います。しいの実シアターは社会から隔絶されたような場所にありながらもそこに社会を見出すことが出来る。ここでの活動が全国、市内にもまだ知られていない、というのはもったいない。もっと発信されるよう期待しています。北九州芸術劇場も劇場文化の拠点ですし、評価を開館以来続けてきている、その中で現在の課題として挙がっているということはこのテーマがいかにむつかしいか、という表れかもしれません」と個々に所感を述べ、オープニングリマークスでも話題に上った、鑑賞活動におけるコロナの影響にも言及いただきました。


津村卓氏(一般財団法人 地域創造 プロデューサー)

「集客という部分を課題として挙げる方も多かったのですが、そこは勘違いをしないでほしいと思います。集客は大事で、予算における重要なポイントでもありますが、地域や劇場が今後何を目指していくのか、という中で、何を創造するのか、舞台にかけていくのかを抜きに集客を考えては墓穴を掘る、と考えます。劇場には、作った時のキャパシティしかないわけです。人口からするとわずかな数でしかなく、例えば1000席のホールのキャパシティを持つ場合、その後ろにどれだけの市民がいるのか。劇場には来ていない市民の方々にも、文化拠点としてどのような影響を与えていくかを考えるべきではないでしょうか」と劇場のあるべき姿を問いかけ、技術革新の活用についても述べました。「劇場が舞台を創るだけではなく、社会のさまざまな課題を解決していく、芸術文化が社会包摂のことばの中で特効薬のような言い方をされることもありますが、あくまで最初の扉、糸口であろうと思っています。糸口としては効果があります、次に何をやるか、また機能と仕組を同時に考えていかないと、働き方改革に引っかかってしまう。これからICTやDXをとりこんでいくことも必要になると思いますが、単に入れればいいというものでもない。どのように使っていくかを仕組みとしてぜひ考えていただきたい」「そのような中で、しいの実シアターの在り方は一つの原型ではないかとも言えます。それぞれのまちの都市機能、規模にあわせてカスタマイズすることは考えてもいいのかもしれません」「コロナのことは科学的な見地をとりこんでいく必要があるかと思います。ハードとして設備を整えることも出来る。また、今回のことで地域にとってアーティストがいかに必要かということも分かったかと思います。地域の中にアーティストとコーディネーターをつくることもお考えいただければとも考えます」

 

国際シンポジウム「劇場の未来を考える~課題解決型シアターマネジメント2022 ―危機を乗り越える―」International Symposium 2022 "The future of theaters: Beyond the pandemic crisis"


■概要

日時 2022年11月 16日(水)10:00‐17:30

場所 Zoom | Webinar ​

対象 本事業研修生及び協力劇場、関係者

趣旨 公共劇場における国内外最新の動向についての情報共有の場として、各劇場の現状を整理し、課題の把握、評価の有効性や活用、 自己評価の試行等に関する議論を行う。

 

■プログラム

 10:00 - オープニングリマークス Opening remarks

垣内 恵美子名誉教授 Prof. KAKIUCHI, Emiko (GRIPS)


■Part Ⅰ|劇場が直面する課題

      Issues facing theaters

10:00-11-55 非公開:closed session 

 各劇場プレゼンテーション<7劇場×15分>

 最前線からの報告 Reports from frontline

 ①10:10ー10:25 札幌コンサートホール Kitara Sapporo Concert Hall Kitara

 ②10:25ー10:40 日立システムズホール仙台 Hitachi Systems Hall Sendai

 ③10:40ー10:55 りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館 Niigata City Performing Arts Center “RYUTOPIA”

 ④10:55ー11:10 神戸文化ホール Kobe Bunka Hall

 ⑤11:10ー11:25 兵庫県立芸術文化センター Hyogo Performing Arts Center

 ⑥11:25ー11:40 松江市八雲林間劇場 しいの実シアター Yakumo Forest Theatre Shiinomi Theatre

 ⑦11:40ー11:55 北九州芸術劇場 Kitakyushu Performing Arts Center


■Part Ⅱ |コロナ禍を超えて ~新たな視点

      Beyond the pandemic crisis : A new perspective

14:10ー15:40 海外招聘パネリストによる基調講演 Keynote speech|同時通訳 (日英)

  14:10ー14:55 政府と劇場:コロナ後はどうなる? ヨーロッパの視点から

  Governments and Theatres: What is Next After Covid? A European View. 

        クサビエ・グレフ名誉教授 Prof. GREFFE, Xavier

       (パリ第一大学 University Paris I)

  

  14:55ー15:40 劇場、コンサートホール、文化センター:ドイツにおける日常生活及び都市発展の灯台/礎

        Theatres, Concert Halls and Socio-Cultural Centres

        Light Towers and Corner Stones of Urban Life and City Development in Germany

        クラウス・クンツマン名誉教授 Prof. KUNZMANN, Klaus R.

       (ドルトムント工科大学 Technical University of Dortmund)


15:40ー16:00 休憩 Break

16:00ー17:20 ラウンドテーブル Roundtable

       (including directors of collaborating theaters, advisory members and panelists)

       (協力劇場館長、アドバイザリー、協力研究者)

17:20ー17:30 クロージングリマークス Closing remarks









【関連ページ】


■国際シンポジウム2022

https://www.culture.grips.ac.jp/symp2022

■令和4年度 文化庁事業

https://www.culture.grips.ac.jp/project2020

■2017年度-2019年度 ハンドブック

https://www.culture.grips.ac.jp/handbook2019

特集記事